重粒子線治療の特徴

がん病巣に狙いを絞って放射線を照射する副作用の少ない治療法

重粒子線治療

従来の放射線治療で使用されるエックス線やガンマ線は、がん腫瘍に対して照射しても、身体の表面が一番ダメージを受け、深層に進むにつれて効果が低くなっていきます。

そのため、身体の深部にあるがん病巣に対して十分なダメージを与えることが出来ずに、表皮に近い正常細胞が大きな被害を受けてしまいます。

一方、重粒子線治療はブラッドピークと呼ばれる特性(体の表面では放射線量が少なく、がん病巣でピークになる特性)を利用して、ピンポイントでがん腫瘍にダメージを与えることが可能です。

このブラッドピークは陽子線治療も同様に有していますが、重粒子線の方が陽子線よりも線量集中性が優れており、がん腫瘍に対する殺傷効果が2~3倍大きいとされています。

重粒子線治療のメリットとデメリット

体の深いところにあるがん病巣でも集中的に照射が行える

従来の放射線治療は、体の表面近くでその効果が最大となり、エネルギーを出しながら体を通り抜けます。当然のことですが、がんは体の中にあるので、放射線治療ではがん腫瘍だけでなく、放射線の通り道にある正常細胞にもダメージを与えていきます。

そのため、放射線治療を行う場合は、正常細胞に与えるダメージの限界量を考えながら照射することになり、体の深部にあるがん腫瘍に対して十分な量の照射を行うことが出来ない場合があります。

一方で重粒子線は、体の中をある程度進んだ後に急激に高いエネルギーを周囲に与えて消滅する、というブラッドピークと呼ばれる特性を持ち合わせています。

この性質を利用することで、周囲の正常細胞を傷つけることなく、体の深いところにあるがん病巣に対しても十分な量の放射線を照射することが出来るのです。

副作用が少なく通院治療が可能、治療期間も短い

重粒子線治療はがん病巣を集中的に叩くため、周りの正常細胞へのダメージが少なく、副作用も最小限に抑えることが可能になりました。

手術のように体を切り開くこともないので通院で治療を行うことが可能で、高齢者や体力の少ない方でも治療を受けられます。

さらに放射線と比べてがん細胞を殺傷する能力が2~3倍ほど高く、照射する回数も少なく済むため治療期間も短くなります。

重粒子線のデメリットは、治療対象となるがんに条件があり、一つの部位に留まっている固形がんで、過去に放射線治療を受けておらず、胃や大腸など不規則に動く臓器ではない箇所に限定される、ということです。

主な重粒子線の対象部位は、脳腫瘍、頭頚部がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮がん、直腸がん、前立腺がん、骨肉腫、軟部組織腫瘍になります。

その中でも高度先進医療の対象となっているのが、頭頚部、肺がん、肝臓がん、骨肉腫、軟部肉腫、前立腺がんで、それ以外のがんは臨床試験中です。

公的保険は適用外のため治療費は300万円前後

重粒子線治療は高度先進医療として国から定められており、診察・検査・投薬・入院料などは健康保険の給付対象となりますが、先進医療に掛かる費用(技術料)は公的保険制度の対象とならないため全額自己負担となります。

重粒子線治療の場合、先進医療に掛かる技術料は平均して300万円前後です。

高額療養費制度の支給対象にならないため、負担額の上限もありません。しかし、個人で先進医療特約がついているがん保険に加入している場合、治療費を保険会社に負担してもらうことが出来ます。

また施設によって臨床試験や治験を行なっているところがあり、がん腫瘍の位置や条件が当てはまれば治療費を軽減して受けられる可能性もあります。

あくまでも治験、臨床試験となるので、思わぬ副作用が出る可能性もありますし、治療を受けられても思ったほど効果が得られないといったことも十分あり得ます。

国内で重粒子線治療を受けられる施設は数えるほどしかなく、そこまでの交通費なども実費となりますので治療費が無料になったとしてもそれ以外の診察費や薬代、交通費や食費などは自己負担となります。

国内数ヵ所のがんセンターでのみ治療が可能

重粒子線治療は民間保険のテレビCMで一躍有名になり、夢の治療と言われるようになりました。

しかし治療を受けるには全国にわずか五ヵ所しかない(※2017年1月現在)施設に行き、約300万円の費用を支払って複数回の通院をしなければいけません。施設を増やそうにも何十億といったお金が必要であり、一朝一夕では難しいでしょう。

そして治療を受けたいと言っても諸々の条件が有り、希望すれば誰もが受けられる治療法ということでもありません。

重粒子線は2003年から先進医療となっていますが、もしかしたら先進医療から外されるのではないか、といった話も出ています。

学会ではまだ十分なデータが揃っていないとされており、厚労省や政府機関などの今後の動向も合わせて注意が必要です。

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